『アンダーカヴァー』(ジェームズ・グレイ/2007)


2008年も終わろうとしている年の瀬、スゴイ映画を見てしまった。ジェームズ・グレイ7年振りの新作『We Own the Night』(敢えて原題で)、初日。アメリカ映画の伝統ともいえる父(ロバート・デュバル)と息子(ホアキン・フェニックス)による重厚な相克と継承の物語。冒頭、ソファーに横たわり誘惑的な姿態でエロチックこの上ないエヴァ・メンデス(彼女ってば、素晴らしい!)のバックでブロンディの「ハート・オブ・グラス」がガンガンに鳴っている。そう、「ハート・オブ・グラス」を聴くのは今年2度目。1度目は、あの素晴らしい『シルビアのいる街で』(ホセ・ルイス・ゲリン)ですよ。『シルビア〜』の少女に当たるミラーボールの明滅も素晴らしかったけど、こちらのホアキンエヴァの直接的肉感的な絡みも掴みとして、たいへんに魅力的なものだ。そこに流れるブロンディ、いいですよね。


裏社会に人脈を持つ反逆児ホアキンと「自分に自信がなくて父の言い成りだった」優等生マーク・ウォールバーグ。家族が麻薬組織に狙撃される事件のあと、ホアキンエヴァ・メンデスに甘えるように跪く場面がまた泣かせる。決心したホアキンは「アンダーカヴァー」として囮捜査に協力するのだけど、ここの緊迫感がね、極上なのさ。麻薬組織に命を狙われる家族、雨の中のカーチェイス、草むらの死闘、、、撃沈です。面白いのは劇中何度も、漆黒の暗闇やピンボケした背景の奥からぬすッ現れてはこちら側に向かってくるホアキンが、ラストの草むらでの決着後は白い煙のなかにぬすッと後退りしながら消えていくところ。出現と消失の見事な対比。合唱にして合掌のラストにはひたすら打ちひしがれることしかできなかったよ、、、大傑作。しかしエヴァ・メンデスいいね、この作品ではビヨンセみたいな感じでした。『ゴーストライダー』も見よう。

Blondie - Heart of Glass


全然関係ないけど昨日の菊地成孔さんの日記、「頭の回転が悲しいほど早い」飯島愛さんのエピソードはとても素敵だと思う。「そうかあ有り難う。でも言っちゃうかあそれ」と言って、豪快に笑い、周囲を咄嗟に制しました、って、素敵ですね。
http://www.kikuchinaruyoshi.com/dernieres.php?n=081227025851