『アルテミスの膝』(ジャン=マリー・ストローブ/2007)

お次は新作。これはストローブ単独名義のクレジットに続いて黒味の中、マーラーの歌劇が延々と流れて、その間私たちは真っ暗な劇場でスクリーンの黒味を見続けるという、ここで泣けるかどうかで決まってくるような気がします。もちろん泣いた。ここで終わっても文句ないかも!?と思ったくらい。続いてあの素晴らし過ぎる『あの彼らの出会い』(2005)の番外編を見るかのような、森林での対話。茶色い服を着た男性の背中に当たる木漏れ日が、最初はユラメキのような美しい光、それが徐々に薄らいでゆき、完全なる日陰、そして眩い光にと、光が様々に変わっていくところが美しい。最後の誰もいなくなった森林でのパンは、冒頭の黒味に泣いたのと同じような理由で涙なしでは見られない。途方もなく美しい傑作!