『春の序曲』(フランク・ボーゼージ/1943)

こちらも無情なまでに擦れ違い続ける恋人たちの物語。歌手志望の田舎女子ディアナ・ダービン(『オーケストラの少女』)の純粋に響かせたい唄が、どこまでも擦れ違いと遅延を繰り返す。『歴史は夜作られる』のシェフもそうだけど脇役たち(執事たち)の所作に一々ユーモアが効いている。ようやく彼女が天性の唄声を響かせたデビューの舞台、人込みを掻き分け彼の元に走っていくラストの大団円(誰よりも彼に聴かせたかった声なのだ)で巧く丸め込まれてしまった。素晴らしい。


フランク・ボーゼージ。『永遠に君を愛す』って見てみたい。