『道中の点検』(アレクセイ・ゲルマン/1971)


下高井戸にて。『戦争のない20日間』に続いて再び打ちのめされた。幕が引いて館内に明かりが点いたあと一歩も動けないこの感じ、スバラシイ!ぶっ飛ばされますよ。「天才は最初から巧い」とは黒澤明アッバス・キアロスタミについて語った言葉だけど、その言葉はまるごとゲルマンの処女作にも当てはまる。戦争映画のような。スパイ映画のような。それでいて雪原の西部劇のような。寡黙な主人公の顔も何処か古典映画のヒーロー/アンチヒーローのようだし。主人公の目を見て全てを了解できてしまう隊長も又然り。冒頭のドイツ軍とパルチザンの目の覚めるような戦闘シーン。逃げ出した牛が首からぶら下げた金属のカランコロンという音がひたすら耳に残る。燃え上がる車、逃げ惑う人の波。鉄橋爆破未遂のシーン。爆破の寸前に橋の下を通り抜ける船には何百人もの捕虜(同志たち)が乗っている。ドイツ軍基地に進入して食料貨物移送の企てを実行するシーン。貨物の横を歩くスパイ=パルチザンたちを横移動で一人一人、順に映していくサスペンスに痺れる。そして終戦。激戦の末、監視台で死ぬ主人公とその奥で走る貨物列車。あまりにも決定的なロングショット!スゴイッ。8月にも上映あるようなので(モーニングショーですが)未見の方は是非。