『戦争のない20日間』(アレクセイ・ゲルマン/1976)


下高井戸にて。『フルスタリョフ、車を!』(1998)は全くもって意味不明にも関わらず強烈な映画体験として未だに忘れられないでいる。なにか巨大な魂の塊を投げつけられたような。そのゲルマン氏による長編第2作目。やっぱり凄かった。これも打ちのめされるような映画。前線で従軍ルポを務める主人公のつかの間の休息、20日間。そこで描かれるのは、帰る場所を失った孤児の行方知れずな彷徨。冒頭の1カットで収めた空爆がスゴイ(これは終盤で繰り返される)。爆風による砂塵がカメラに向かってくる。汽車からの風景。酷く暗い霧のかかった曇天模様のロシア。生活を営む人の顔、そして顔。主人公と別れを告げる女性の顔が、この霧のかかった街の風景の如く深〜いフェードアウトで闇に消えていくショットに身の気がよだつ。彼女は亡霊だろうか。雨の降る夜のロマン。秒針の音が印象的。傑作です。


アレクセイ・ゲルマンとヴィタリー・カネフスキー、もっと上映されればいいのに。


追記*『フルスタリョフ、車を!』の公式サイトが残ってるみたいなのでリンクを。青山氏中原氏樋口氏のコメントとか読めますよ。
http://www.pan-dora.co.jp/khrous/index.html