『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(ポール・トーマス・アンダーソン/07’)


アイム・ノット・ゼア』と続けて見ると映画の純度という点でこちらの方が圧倒的に勝っているのは一目瞭然。ダニエル・デイ=ルイスの笑顔は本当に怖い。油井の話を持ちかけるポールとイーライが同一の肉体による双生児のように、中盤に登場するダニエルの”弟”を名乗るヘンリーも又、ダニエルの双生児なのでしょう。善と悪ではなく、共に悪と悪の。欲(グリード)と欲の。この双生児の関係はダニエルとイーライの間でも結ばれ、最終的に、、、ってネタバレ厳禁か。ところで石油の噴射シーン及び事故シーンはとんでもないことになってる。ダニエルが一瞬太陽に差し出す石油まみれの手はその神々しさ故に危険だ。石油=血ということなのだけど。テレビのニュースで見かける石油まみれのカモメ、その人間版も恐ろしい。ついでにジョニー・グリーンウッドレディオヘッド)による劇伴は不協和音の強弱や、幾層のリズムが重なり合って次第にカクカクしたポリリズムを刻むかのような奇怪な音の変化球で恐ろしい。と、ここまで書いておきながら正直に言うと、今回もPTAのよい観客にはなれなかった。すごく面白いんだけど何処か肝心なところで出会えないんだわ。なむー。