『霊長類』(フレデリック・ワイズマン/74’米)

アテネフランセでワイズマン2本。案の定どちらも面白い。先日の『かつて、ノルマンディーで』(二コラ・フィリベール)に続き、ドキュメンタリー作品でまたも動物の内臓を見るハメに。フィリベールの豚の皮を剥ぐシーンはカラー故に結構ショッキングだったのだけど、こちらはモノクロなので若干の安全フィルター?が入る。とはいえホラー映画以上にエグいのだけど。チンパンジーやオランウータンの実験をしている(しかし何の為の実験かは明かされない)研究所の職員が悉く猿系の顔なのが気になる。特にボスらしき人物が。一緒に過ごしてると似てくるのか?更に驚くべきことに、手だけ映されるチンパンジーや剃毛されたオランウータンの背中が、人間のそれと何ら変わらなく見える瞬間があってハッとさせられる。オランウータンの背中なんて、ちょっと艶っぽいくらいだし。映画の最後の方でこの謎の研究について討論するシーンがある。曰く「無意味な研究の有用性」そして「ヨーロッパに負けるな」。頭に電子盤を埋め込まれたチンパンジーが空に放たれ、無重力の中、更なる実験が行われる。モニターに映るチンパンジーの顔に、ライカ犬の悲劇を重ね合わせるのは『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(ラッセ・ハルストレム)のイングマル君でなくとも、当然の連想でしょう。傑作。


『少年裁判所』は少年院の全体体操の風景など映画的に輝く瞬間を挿みつつ、3人以上の人間が織り成す心理サスペンスといおうか、極めてスリリングなやりとりを堪能できる。継父に性的虐待を受けたと訴える少女の、ソーシャルワーカーを前にした母、継父との告白大会(事実云々置いても一生残る傷である)。12歳少年の6歳少女に対する性的虐待事件では、少女の母と加害者少年の言い分が微妙に食い違う。ラスト、20年の刑か数ヶ月の少年院かで、判事、弁護士、少年の織り成す「法廷劇」は残酷なくらいサスペンスに満ちている。あくまで「ハメられた」と無実を訴える少年の気持ちをないがしろにしながら、「記録には残らないから安心しろ。ここはアメリカだ」という言葉が強く印象に残った。