My 100 Best Films of The 2010s (21-30)

21.『バンコクナイツ』/富田克也(2016)

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Bangkok Nites / Katsuya Tomita (2016)

 

素晴らしい映画は下手な旅をするより、ずっと深い旅をした気分になれるとは友人の名言ですが、この作品は1週間くらい旅をしていた気分になれる映画です。「バンコク・・・shit!」で始まる大傑作。日本映画の枠を遥かに越えている。

 

22.『夜の浜辺でひとり』/ホン・サンス(2017)

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On the beach night alone / Sang-soo Hong (2017)

 

「単純さはそんなに単純なものではない」と、かつてアッバス・キアロスタミは言ったけれど、その言葉はそのままホン・サンスの作る映画に当てはまる。こんなに単純に撮っているのに、単純さには至らない。これは凄いことだ。「勉強には汚れがない」というセリフに打たれる。

 

23.『私の死の物語』/アルベルト・セーラ(2013)

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Story of My Death / Albert Serra (2013)

 

すべてがスローモーションのように見えることの無時間の官能性について。アルベルト・セーラの最高傑作。

 

24.『アンダー・ザ・シルバーレイク』/デヴィッド・ロバート・ミッチェル(2018)

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Under The Silver Lake / David Robert Mitchell (2018)

 

「もし僕が若かったなら、この町を出て夢を埋めてしまいたい」(『アメリカン・スリープオーバー』)。こんな風に映画を考えている人がいること自体が希望。デスマスク・フロム・セブンスヘヴン。「理解ができない感情」の中心にカート・コバーンの肖像。

 

25.『犬ヶ島』/ウェス・アンダーソン(2018)

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Isle of The Dogs / Wes Anderson (2018)

 

スポッツの台詞「友達にはなれないけど、大好きだ」は、叶わない狂おしさがありながら、同時にハードな決意でもあって、『犬ヶ島』のことを考えるだけに留まらず、共生するということのヒントを思う。この男の才能、天井知らずかよ!、な傑作。

 

26.『夏をゆく人々』/アリーチェ・ロルヴァケル(2014)

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The Wonders / Alice Rohrwacher (2014)

 

アリーチェ・ロルヴァケルの登場は希望でしかない。アニエス・ヴァルダ『冬の旅』の景色を超現実的に拡大解釈していくような作家が出てきた。ラストシーンの美しさには眩暈がする。

 

27.『ソーシャル・ネットワーク』/デヴィッド・フィンチャー(2010)

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The Social Network / David Fincher (2010)

 

爆音でクラブミュージックが流れる中での決めセリフ「This is our time!」を忘れることはないだろう。終わらないパーティー。爆速で過ぎていく爆裂に面白い作品。そしてルーニー・マーラを私たちは発見することになる。

 

28.『トスカーナの贋作』/アッバス・キアロスタミ(2010)

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Copie Conforme / Abbas Kiarostami (2010)

 

キネ旬ジュリエット・ビノシュについて書いているときに再見したのだけど、やはり物凄い傑作だった。車の運転席と助手席で語り合うシーンという単純なシーンがまったく単純じゃないことにまず驚く。ここでビノシュは「カメラに記録される女優」として、自身のキャリアを変容させるアプローチを得たのかもしれない。

 

29.『ヴィタリナ』/ペドロ・コスタ(2019)

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Vitalina Varela / Pedro Costa (2019)

 

ジャック・ターナー『私はゾンビと歩いた』の一番美しいショットからの解釈を、ペドロ・コスタは全てのショットで完遂させる。自身の美学を完遂させることで最もラディカルな成果を得ている。

 

30.『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』/トッド・ヘインズ(2011)

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Mildred Pierce / Todd Haynes (2011)

 

トッド・ヘインズ版"女の一生"。ヘインズの最高傑作は迷うことなく本作。ここから『キャロル』の視線と反射の方法論へ純化していくことも含めて。

 

My 100 Best Films of The 2010s (31-40)

31.『永遠の僕たち』/ガス・ヴァン・サント(2011)

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Restless / Gus Van Sant (2011)

 

ミア・ワシコウスカとヘンリー・ホッパー。この二人の出会いこそがこの美しい作品の最大の功績。ヘンリー・ホッパーのラストスマイルはこの映画を愛する全員の心に永遠に刻まれた。

 

32.『ゴダール・ソシアリスム』/ジャン=リュック・ゴダール(2010)

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Film Socialisme  / Jean-Luc Godard (2010)

 

2010年代ゴダールといえば、個人的にはこの作品。特に荒々しさと美しさが同居した第一部はパーフェクトなフレッシュさだった。

 

33.『山河ノスタルジア』/ジャ・ジャンクー(2015)

f:id:maplecat-eve:20191227212413j:plainMountains May Depart / Jia Zhangke (2015)

 

フィルメックスのQ&Aのとき、中国人の女性のお客さんがジャ・ジャンクーに「(この映画撮ってくれて)ありがとう」と言いながら泣き崩れてしまったのが忘れられない。この作品で描かれる悲痛な未来は現在の「私たちの住んでいる世界」に他ならない。

 

34.『アイリッシュマン』/マーティン・スコセッシ(2019)

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The Irishman / Martin Scorsese (2019)

 

スターピース!!!スコセッシが真正面からストロングスタイルで描きたかったことがこれなのかとリスペクトしかない。謝るということ。そしてそれは決して許されないということ。打ちのめされる体験だった。圧倒的!

 

35.『MUD -マッド-』/ジェフ・ニコルズ(2012)

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Mud / Jeff Nichols (2012)

 

マシュー・マコノヒーへの書き下ろし映画。ジェフ・ニコルズは『Mud』を撮るにあたって「サム・ペキンパーマーク・トウェインを撮ったら」と思い描きながら撮影に挑んだそうだ。まったくブレのない強靭なスタイルとアメリカの風景に脱帽!!!

 

36.『A Ghost Story  ア・ゴースト・ストーリー』/デヴィッド・ロウリー(2017)

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A Ghost Story / David Lowery (2017)

 

幽霊は延々と待ちつづけた結果、もはや誰を待っているのか思い出せなくなる。永遠だと思っていた記憶にさえ賞味期限があるなんて、せつない。決して忘れないという意思と、忘れてしまうことへの恐怖と、思い出せないということの深すぎる悲しみ。

 

37.『トイ・ストーリー3』/リー・アンクリッチ(2010)

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Toy Story 3 / Lee Unkrich (2010)

 

トイ・ストーリー3』を21世紀で最も美しいアメリカ映画だと思う理由。ここには引き裂かれる二つの強すぎる感情への別れがある。

 

38.『贖罪』/黒沢清(2012)

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Penance / Kiyoshi Kuroswa (2012)

 

小泉今日子がもはや日本人の女優ではなく、フランスの大御所女優のようなエレガンスを身に纏っている。彼女が敬愛するジャンヌ・モローのように。

 

39.『マリアンヌ』/ロバート・ゼメキス(2016)

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Alied / Robert Zemeckis (2016)

 

マリオン・コティヤールは現代最高の女優。マリオンが映る度に泣いてしまう。古典映画の女優にうっとりするのと同じ領域に入っている。マリオンの映画女優としての「線」を確実に捉えたこの作品はとても美しい。ブラッド・ピッドも過去最高だと思う。

 

40.『グッバイ・ファーストラブ』/ミア・ハンセン=ラブ

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Un amour de jeuness / Mia Hansen-Love (2011)

 

女の子の背中から物語が始まる。「さよなら」という言葉は決して何かを消し去ったりすることではなく、何かと共に生きていくんだ、という晴れ晴れとした気持ちが湧きあがってきたとき、初めて身に纏えるんじゃないかな、とも思います。『永遠の僕たち』のヘンリー君の微笑みや、『グッバイ・ファーストラブ』の帽子が教えてくれること。