『感傷的な運命』(オリヴィエ・アサイヤス/2000)


日仏学院オリヴィエ・アサイヤス特集にて2本。両作とも日本語字幕付。『8月の終わり、9月の初め』では通路に座布団席まで出る盛況ぶり。明日より新作『夏時間の庭』が銀座テアトルシネマにて公開されます。おぉぉ、アサイヤス、凄い人気だねー。


『感傷的な運命』はエリック・ゴーティエ撮影による古典西部劇を想起させるパーフェクトなロングショットから始まる。このファーストショットから傑作の予感ギンギンで参ってしまったのですが、はてこのクラシックな佇まいで全編を通すのか?!と思いきや、世話しなく動き回る人と追いかけるカメラは、まさにアサイヤス印といいましょうか、女優を彩る絢爛な衣装と相俟って、クラシックモダニズム、とでも言いたくなるような、硬軟を自在に行き来する撮影がとてつもなく素晴らしい。フレームの外からヴァイオリンのチューニングのような音が聴こえ、さて、いよいよワルツが演奏されると、手を取り合った男女がクルクル、追うカメラもクルクルと回りだすダンスシーンに目が眩んだ。このクルクルぶりはアヴァンギャルドですらあると思う。クルクルしながらパンして階下の舞踏会の様子とか見事にキマる。



役者陣は皆一様に素晴らしい(ミア・ハンセン=ラブ、綺麗!)のですが、やはり主役(シャルル・ベルリングとエマニュエル・ベアール)の2人の老けメイク込みの存在感が素晴らしい。個人的にエマニュエル・ベアールの出てくるファーストショットというのは、いつもドギマギしてしまうものですが(ラウル・ルイスの『見出された時』とか激カッコよいのです)、本作でも馬車に乗ったやや不安定なショットで登場、これが良い、画面に緊張が走る。死の床に横たわるシャルル・ベルリングと彼を看取るエマニュエル・ベアールの素晴らしいアップで切り返されるラストでは「人生に失敗はない」という言葉を何度も噛み締めるようにして聴いた。涙。