『ローマで夜だった』(ロベルト・ロッセリーニ/1960)


VHSでロッセリーニ。古典という言葉が孕むノスタルジックな響きとは全く無縁な現代映画。刺激的!全てのシーンが瞳に焼きつく。VHSの画質で言うのもどうかと思いますが、冒頭、トラックの荷台に脱走兵たちを匿う(偽)修道女たちの衣装、暗闇に光る白が既に素晴らしい。長い長い一夜が明け、自分たちが運ばれてきた場所がローマだと分かる朝、この一連の展開に泣く。大変な困難に気丈(でも癇癪持ち、というところがよい)に立ち向かう美しい(偽)修道女ジョヴァンナ・ラッリはイギリス人、アメリカ人、ロシア人といった国籍も言語も違う脱走兵たちを匿う。一人の美女を囲む男達という並びがカッコよい。この並びのよさは3人5人となると更に輝きを増す。クリスマスにみんなで手を取り合って唄い踊る(「蛍の光」)束の間の会食には涙が溢れた。脱走兵が身を隠す屋根裏の美術も素晴らしい。屋根裏には不気味な石像が並び、出窓から屋根へ渡る。


戦時下のサスペンス。一息の長回しで撮ってる箇所が多いのだけど、全くそれを意識させない。カメラを大きく振ってズームしたり引いたりを織り交ぜてても、あざとさは皆無。しかもそれらの大半は夜の闇の中で激動にして激情/非情のアクションをそ知らぬ顔で紡いでいる。死体の見せ方に背筋が凍る。緊迫感溢れる芝居の持続を壊さないように奥の部屋へ移動してもカットを割らず、転がる死体の顔を闇でぼかしている。なんだこの見せ方は。恐ろしい。顔と顔を沈黙の内に次へ次へと繋ぐ長回し。映画はジョヴァンナ・ラッリの落涙で終わる。スゴイ!