『チェチェンへ アレクサンドラの旅』(アレクサンドル・ソクーロフ/2007)


ユーロスペースにて。アレクサンドラお婆さまが大地に足を降ろすセカンドショット(足のアップ)→砂塵が吹き荒れるサードショットで傑作の予感がする、と同時に、え!?ソクーロフアメリカ映画ですか?と一瞬、驚く。最も興味深かったのは音響処理。序盤から随分と音がいいね、と思っていると、やがて移動場面などでフレーム内、フレーム外、何処でもない音、ソプラノ歌手の唄という、4つくらいのレイヤーが複雑に重なり合った、というよりコラージュされたミュージック・コンクレートのような音響に変化してる。ひょっとしてこれってお婆ちゃんフェチの映画!?と青年(孫)とアレクサンドラの性的倒錯を披露するかのような抱擁(とても美しい場面/美しい二人の所作です)もあり、ラストの列車に乗ったアレクサンドラの移動してるのに何処にも行けなさ、も大変素晴らしいと思うのですが、しかし何処かでこの映画にのめり込めてない自分がいる。ソクーロフの踏み出した新たな一歩を確認する以上のものを感じることが出来ませんでした。