ティモシー・シャラメ論

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Timothee Chalamet

リアルサウンドさんにティモシー・シャラメ論「ティモシー・ステップ」を寄稿させていただきました。初の男性俳優!ティモシーについて書きたいなと思ったのは、今年のカンヌ国際映画祭でのアイドルぶりが決定打でした。時代に合った、まったく新しい俳優だなと思っています。カッコいい女性たちからの学びをここまでハッキリと活動に反映させているハリウッド・プリンスは、過去に例がないと思います。リアルサウンドさんで書いてきたエマ・ストーン論やマーゴット・ロビー論ともつながりがあるのは偶然ではないです。特にエマ・ストーンへのリスペクトは嬉しいですね。スカーレット・ヨハンソンマーゴット・ロビーのような有言実行なオピニオンリーダーたちとはまた違って、どちらかというと言動よりも作品をもって活動家としての意志を示してきた人なので。ティモシー・シャラメの愛する『小悪魔はなぜモテる?!(Easy A)』や『ラブ・アゲイン』は、第一期エマ・ストーンの代表作であるだけでなく、現代アメリカ映画のとても重要な作品だと思っています。

 

realsound.jp

 

以下に、ティモシー・シャラメの発言を抜粋。

 

グレタ・ガーウィグとは何でも一緒に仕事をしたいと思っています。彼女が出演しているもの、彼女が同意しているものは、すべて素晴らしいものになるでしょう。彼女には完全に畏敬の念を抱いています。彼女から学んだことをずっと話していたいくらい、彼女は素晴らしい人なのです」

 

「『ダークナイト』のヒース・レジャーを見た夜のことは、今でもはっきりと覚えています。ちょうど妹のバレエ公演を見に行ったところで、母と祖母に何度もリクエストして、一緒に映画を見に行ったのです。タイムズスクエアにある劇場で、ヒース・レジャーの演技は私の心に大きな影響を与えました。劇場を後にしたとき、私は少年のように変わり、俳優になりたいと思うようになっていました」

 

「子供の頃、アメリカとフランスを行き来する生活をしていたので、アイデンティティの危機に陥りました。1年のうち8ヵ月をマンハッタンのような場所で過ごし、残りの4ヵ月をフランスの小さな村で過ごすというのは、子供にとっては奇妙なことですよね。しかし、この文化的な隔たりは、俳優としての私を助けてくれました。エリオ役を勝ち取ることができたのは、このおかげだと確信しています」

 

「台本を読んで、自分の中で急激なプレッシャーを感じたら、それはその役を望んでいるということだと思います」

 

「インタビューマガジン」でのマシュー・マコノヒーとの対談↓

 

「しかし、実際のところ、演技とは何だろうか?私たちは何のために存在しているのだろうか?私たちは人間性をさらけ出すために存在しているのです。"私はあの男ではないが、あの男のことを知っている "と」(マシュー・マコノヒー

「準備をすることと、現場で自然に起こることとの間には、絶妙なバランスがあると思います」(ティモシー・シャラメ

 

「演技とは、自分を正直に見せ、傷つきやすい可能性に心を開くということだと教わりました」(演劇学校で教わったことについて)

 

「まず第一に、彼(エリオ)は精神的な目覚めの途上にある若者で、それは性的なものであると同時に、アイデンティティに関わるものです。若い人の本能的な感覚がどのようなものであるかを追うということでした」

 

「ジャーナリストである父とたくさん話をしました。また、ウェス・アンダーソン監督は非常に几帳面な監督なので、すべてのシーンで指導をしてくれました。二人のおかげで、ゼフィレッリを演じるための鍵を見つけることができました」

 

「母は何百ものオーディションに同行してくれました。言語を学んだり、ピアノを弾いたり、自分を向上させるように励ましてくれました」

 

「大事なのは、撮影を始める前に物語のトーンに質感や色を与え、キャラクターを形成することです。私は本能で動く俳優ではないので、自分で準備する必要があるのです」

 

「6年前に『ダークナイト』を観たときのような直情的な反応をしたのは、これまでで唯一のことでした。映画が始まって40分ほど経ったところで、尋問のようなシーンがあって、フィリップ・シーモア・ホフマン演じる主人公が、ホアキン・フェニックスに聞かれたことにすべて正直に、まばたきせずに答えなければならないと言います。私は仰天しました」(『ザ・マスター』について)

 

「創作活動を続けるためには、自分がどのように消費されているかについて、ある種の無知さが必要です」

 

ティモシー・シャラメの好きな映画、またはこれまでにインタビューやポッドキャスト等で言及した映画については、ファンの方がLetterboxdにまとめています。コメント付きで。素晴らしい労力!『フロリダ・プロジェクト』のことを絶賛しているのは嬉しいですね。グレタ・ガーウィグにはエリック・ロメールの『モード家の一夜』を見るように指示されたらしい。などなど。

 

letterboxd.com

 

そして『フレンチ・ディスパッチ』は、凄い作品でした!映画の長尺化が流行の中、これだけのことを100分に収めるウェス・アンダーソンは反時代的。もはやスタイルを真似することは誰にも出来ない(緻密すぎて不可能!)エクストリームな画面の連続でした。

レア・セドゥ論

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Lea Seydoux

realsound.jp

 

リアルサウンドにレア・セドゥ論「セドゥ、レア・セドゥ」を寄稿させていただきました。レア・セドゥとの出会いは2009年のフランス映画祭で上映されたクリストフ・オノレ美しいひと』に遡ります。とんでもない才能が現れた!と思ったものの、まさかここまで大きな俳優になるとは思ってませんでした。いまやフランス映画に留まらず、ワールドワイドな活躍。アイコンのような存在ですね。カンヌで出演作が4本同時出品って異常事態だと思います。東京国際映画祭での舞台挨拶に行ったのも懐かしい、、。

 

というわけで、レア・セドゥについて書けたのは嬉しかったです!ずっと追ってきたので。レア・セドゥはホントいろいろな映画作家の作品に飛び込んでいて、初期にはジャン=ピエール・モッキーの作品なんかにも出ています。ベルトラン・ボネロやアルノー・デプレシャンの作品とかについてもっと触れてみたい。アモス・ギタイが撮ったレア・セドゥ作品も好きです。大好きな『ゴースト・プロトコル』についてもきっちり触れてみたい、、、レア・セドゥ全作品解題!とか喜んでやりたいですね。アンナ・カリーナ全作品解題!ジーン・セバーグ全作品解題!エマ・ストーン全作品解題!スカーレット・ヨハンソン全作品解題!マーゴット・ロビー全作品解題!ジョディ・フォスター全作品解題!

 

ウェス・アンダーソンの『フレンチ・ディスパッチ』は、まだ試写に行けてません。ウェス・アンダーソンは「レアにはもっと大きな役をやってもらいたかったんだ。彼女のことを念頭に置いて(脚本を)書いた」と語っています。楽しみすぎる。

 

レア・セドゥとカンヌの関わりは本当に深くて、まったく無名時代だった2007年にまで辿ります。ニコラ・クロッツの短編が上映されたのが始まり。最初のブレイクは記事でも触れた『美しいひと』です。記事の冒頭にも引用したカンヌ映画祭のディレクター、ティエリー・フレモーがレアを評した言葉は本当に正鵠を得ています。

 

ブリジット・バルドージュリエット・ビノシュケイト・モス、そして時にはその3人の要素が同時に現れる」

 

以下、それほど多くを語らないレア・セドゥの言葉をメモ。

 

「演技は快適なものであってはならない。自分の血と肉をテーブルの上に置かなければならないのだから」

 

「”アクション!”と聞くと、私はこのキャラクターになる。捏造はない。彼女は私の中に生きている」

 

「"アクション!"と聞いた瞬間にキャラクターになります。でも、キャラクターが私のところにやってくるとは思いません。演じなければならないものだとは思っていません。自分の中にあるものです。それを探さなければなりません。私は外から何かを作り出すということをあまり信じていません」

 

「監督の文化や出身地を理解しなければなりません。映画は言語の一形態であり、ある意味では監督の言語に適応しなければなりません。ウェスはアメリカ人ですが、フランスの文化を愛していて、半分はパリ、半分はイギリスに住んでいます。彼と一緒に撮影していると、言葉を超えて理解できるものがあるのです」

 

「ウェスは私たちを家族のように見ています。クエンティンも同じです」

 

クエンティン・タランティーノは、”君を誇りに思うし、君が女優として成長したことを誇りに思う”と言ってくれました。とても感動しました。22歳か23歳の若い女優が彼と一緒に仕事をすることがどれほどクレイジーなことか想像できますか?」

 

アルノー・デプレシャンと仕事をすると、新しい意味の扉が開かれます。彼の映画は文学から来ているので、一緒に仕事をするのは本を読むようなものなのです」

 

「フランスの女優になりたいわけではありません。私は女優になりたいのです。私は性別というものが好きではありません。男らしさと女らしさが同居している俳優が好きです。私は特定の方法にとらわれたくないのです」

 

「私にとって、この映画(『アデル、ブルーは熱い色』)は単なる映画ではありませんでした。映画以上のものでした。実生活での経験が、私の人生を変えたのです。撮影時に特別な作品になるとは思っていましたが、ここまで特別な作品になるとは思っていませんでした」

 

「アブラティフ・ケシシュ監督の仕事の方法、撮影の方法、それはとても特別なことで、同時にクレイジーでもありました。俳優としても面白かったです。リアルな体験であり、実存的な体験でもありました。とても強烈で、難しく、残酷な体験でしたが、面白かったと思います。無駄ではありませんでした。私たちは素晴らしい映画を作りました。私の人生の中で特別な瞬間だったと思います。自分が行ったことを誇りに思っていますし、この映画を誇りに思っています。たとえ困難なことであったとしても、ポジティブなことです」

 

イザベル・ユペールは、監督と仕事をしているときは、映画の中に自分の映画を作っているようなものだと言っていましたが、まさにその通りだと思います」

 

「無名の俳優でも、子供でも、大人でも、有名な俳優でも、私は常に演技におけるシンプルさを求めており、レアはその質を非常に印象的なレベルで備えています。そして、彼女は非常にユニークな感情を持っていると思います」(ミア・ハンセン=ラブ*現在レア・セドゥとの新作を準備中)

 

などなど。ベルトラン・ボネロが『サンローラン』を撮ったときの、ヘルムート・バーガーのエピソードとか面白いんですけどね。キャスティングの段階で、ものすごく傲慢な態度だったので、ボネロはこれ以上彼と仕事を続けるのは難しい!と思ったものの、現場に来て35ミリのカメラ、美しい照明を見たら、ヴィスコンティの時代を思い出したのか、撮影をとても楽しんでくれたのだそうです。これはボネロの映画らしい哀しくも美しい逸話だと断言したいです。

 

お時間あるとき、宜しくお願いします。いやホント、レア・セドゥ全作品解題!心からやりたい笑。レアのことが好きすぎます。

 

*出典のほとんどは以下のインタビュー(2021年)

deadline.com