『ブエノスアイレス』(ウォン・カーウェイ/97’)

ブエノスアイレス [DVD]

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マイ・ブルーベリー・ナイツ』に備えて未見だった『ブエノスアイレス』を見る。マヌエル・プイグの『天使の恥部』(このラテン文学は菊地さんのファンにはお馴染み?)が好きというカーウェイにとって恐らく念願の南米ロケだったのでしょう。トニー・レオンレスリー・チャン扮するゲイカップルの荒々しいセックスから始まるこの映画、彼らの肌と肌がぶつかり合う音が官能的なくらい耳に残る。この音が全くもって素晴らしい。二人の途方に暮れる沈黙の時間にアストル・ピアソラ(『情熱的挑発の孤独』かな?)の音楽が被さるという、又は情熱的なタンゴのダンスシーン、女性の足が天井に向かってピンと上がると絶頂に達するという、もうこうゆーのはヤバイ、ヤバすぎる。フランク・ザッパの音楽もよい。ウォン・カーウェイって、ショップウィンドウ越しに人物を撮るの好きだよね。勿論この作家特有のコマ落としは全然好きになれないのだが、トニー・レオンレスリー・チャンが煙草の火を移し合うショットでの使用は結構よい。自分にとってウォン・カーウェイは『花様年華』『2046』と、一部で最高傑作との声もある『若き仕立て屋の恋』なのだけど、これもなんというか引っ掛かるものがある。