『接吻』(万田邦敏/08’日)

劇中の至るところで振り撒かれた点と点が繋がり、ふいに画面の余白で恐ろしい容貌を帯びはじめるや、お見事ッと叫びたくなる。台詞だったり、小道具だったり、風景だったり、極めつけはネタバレになるので書けないけど、トヨエツと小池栄子のアレです。いろんなものが繋がっている。中心にあるべき、何故小池栄子(OL)が豊川悦司(殺人犯)に恋をするのか?の答えを周到に避けながら、だけど周縁はガッチリ埋めていく作劇。だからこそラストの衝撃は半端ない。誰もが『永遠の語らい』(オリヴェイラ)のマルコビッチのお口アングリな表情になること請け合いのラスト。藤井仁子さんが万田夫妻の映画作りを「論理的」と評するのも、全くその通りだわと頷く。この映画で一番好きなシーンは拘置所での面会場面。仕切りを挿んだ小池栄子豊川悦司の「夫婦喧嘩」と、なにより小池栄子が「寝てもいい?」と眠るところ。死刑判決が迫る中、二人で話のできる貴重な時間を眠りに費やすこと。彼女の寝顔を見守るトヨエツ。仕切り板を忘れさせるくらい、ここには恋人たちの何気ない時間が流れていて泣いてしまう。小池栄子映画女優だね。


追記*仲村トオルの告白も素晴らしいです。


『Unloved』もレイトでやるそうです。ええ、行きますとも。
http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=137


書店に寄ったら山田宏一責任編集のユリイカ増刊号「ジャン・ルノワール」と共に、こんなものが出ていた。

若松プロ、夜の三銃士

若松プロ、夜の三銃士

平岡正明氏による若松孝二。昨年『天使の恍惚』を見直して、こりゃ傑作だわと思った次第。平岡正明氏の著作はガツンとキますね。


若松孝二レトロスペクティブ 3/15〜 シネマヴェーラ
http://www.cinemavera.com/schedule.html