『かつて、ノルマンディーで』(ニコラ・フィリベール/07’仏)

豚の出産シーンではじまるこの作品もまた、対象こそ違えど『動物、動物たち』と同じく「蘇生」をテーマにしているのだけど、そこに作家自身のナレーション(ここで、おや?、と思った)が被りはじめるや、フィリベールの私的追憶が画面に滲み出し、これまでの彼の作品とは毛色の違った展開が予想される。ルネ・アリオのかつて(30年前)この場所での仕事(『私、ピエール・リヴィエールは母と妹と弟を殺害した』)を「歴史を彼らに返すような」と追想するフィリベールもまた、30年という月日の返還(または帰還、蘇生)を彼らとその土地と自らに対して行っているようだ。それは出自を再確認するかのような作家の決意表明であったり、今はここにいない父の映像が映し出されるに至って、くっきりとした輪郭として浮かび上がってくる。ただ、ここでの輪郭が単なるノスタルジーで終わらないのは、カメラの向こう側から何かを語りかける父(無声なのだ)との間に、絶対的な壁が存在しているという事実もまた同時に意識されるからなのでしょう。そして人生は続く。ところで「愛人顔」のエピソード。ボレル一家が素敵だわ。


「明るい部屋」さんの日記(毎度のことながらとても勉強になります!)で知ったのだけど、ルネ・アリオの『私、ピエール・リヴィエールは母と妹と弟を殺害した』はフランスでDVD化されたらしい。たぶん英語字幕はないんだろうけど、買わなきゃねー。


*追記 パンフがとても充実してるし、劇場でクッキーもらえるかもよ。29日まで!
    劇中で挿入されたジャック・ドワイヨンの『あばずれ娘』、是非とも見たい。