『魔女』(ベンヤミン・クリステンセン/22’デンマーク)

魔女 クリティカル・エディション [DVD]

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「魔女」の歴史を素晴らしい(というより異様な)美術で描く怪奇サイレント。特にサバト(魔女と悪魔が宴をあげる場所)の美術が凝っていて面白い。後半発狂したシスターたち(10人くらい)が教会で奇天烈なダンスを踊るシーンは、このサバトの宴と照応している。彼女たちは見えない悪魔と踊っているのだ。悪魔は夜に来て、女性の抱える想像上の不安を次々と現実に還していく。映画は迷信が強く信じられた中世の再現(魔女狩り)を丹念に描いていく(風呂敷被ったお婆ちゃんが怖い!)。しかしクリステンセンは悪魔は決して過去の迷信ではないと主張する。そこで現代における不安神経症と「魔女」とを結びつけ、「異常」と「正常」の判別を揺さぶる。前半の「絞首台の上の星がキレイね」という台詞が示唆するところこそ、クリステンセンが提起する主題の伏線となっているのでしょう。


魔女狩りで無実の罪に問われた女性の流す涙は、そのまま『裁かるゝジャンヌ』(カール・テホ・ドライヤー)のファルコネッティに受け継がれているのかもしれない。それにしても昔の人が考える拷問器具やその方法って、洋の東西問わず、凄まじく残酷な想像力が費やされているのだよね。怖い。

黒い文学館 (中公文庫)

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サバトつながりで生田耕作。ついでにミシュレ『魔女』(上・下)も。