『人のセックスを笑うな』(井口奈己/07’日)

『スウィニー・トッド』と『人のセックスを笑うな』を見る。
(『人セク』は土日両日満員御礼、今日も全回満席。
 すげー!)


井口奈己による、この大胆な長回しを多用した珠玉の作品は、
ともすれば不自由さを抱きかねない緻密な画面設計に寄りか
かるような長回しとは対極の、蓮實重彦菊地成孔でも言及
されたクロノスでもカイロスでもない時間/発生時間の積み
重ねによって、一時的に(これまた発生時間によって)役者
をフレームから開放している(そのように見える)。話しな
がらキスをするシーンや、二人でエアーマットを膨らませる
シーンなど、いったいどーやってこんな魅力的なショットが
撮れるというのだろう?、と思わずにはいられない。


永作博美の演技は、ほとんど奇跡としかいいようがない。
(というか松山ケンイチ蒼井優忍成修吾も同じく)


そもそも現実のキスという行為自体が時間軸を軽く
超えてしまう体験として誰しもが共有しているわけで、
そういう記憶の中での艶かしいキラキラした感触を
思い出させてくれる映画のキスって、なかなか、ないなと。


永作さんと松山くんが河川敷で自転車の二人乗りをするシーン、
前述のエアーマットを膨らませようと二人でじゃれあうシーン、
どのシーンも、一回性の時間というか、忘れられてしまう時間
と言おうか、観る側の記憶の中の時間と言おうか、いとおしい。


取りこぼしてしまった時間を回復させる映画です。
なんだか、センチメンタルな気分にになりそうだ。


「会えなければ終わるなんて、そんなもんじゃないだろう。」


オー、イエス


追記:マリマリの唄う「いかれたBABY」「MY LIFE」
   (フィッシュマンズのカヴァー)サントラも欲しい。