「Suite For Barbara Loden」

Suite for Barbara Loden

CINEMOREさんへの『WANDA/ワンダ』評のリサーチで読んだナタリー・レジェによる「バーバラ・ローデンのための組曲」について少しだけ本文をご紹介。バーバラ・ローデンの言葉もあります。批評とも伝記とも私小説ともつかない、とても美しい著作でした。特にインスピレーション元となった実在のワンダことアルマ・マローンの新聞記事を発見していく過程がスリリングでした。アルマ・マローンは銀行強盗共助の罪で20年の刑を宣告されたけど、1970年には仮釈放されています。以下、抜粋。

cinemore.jp

「彼女は遠くまで泳いだ夜のことを思い出していた。岸に戻れないという恐怖に襲われていた。今、彼女は振り返らず、幼い頃に通った草原のことを思い浮かべている。草原には終わりも始まりもないと信じて。彼女は遠くを眺めている。かつての恐怖が一瞬湧き上がり、そしてまた沈んでいった」

 

マルグリット・デュラスはこう語っている。この映画で彼女は自分が持っているものを聖なるものにする方法を見つけたようです。私はそこにある種の栄光を見ます。それはとても力強い栄光で、とても暴力的で、とても深いものです」

 

「敗北の中に壮大な何かを成し遂げようとする欲望」(*セリーヌ『夜の果てへの旅』はバーバラ・ローデンの愛読書)

 

「自分自身ではなく、自分自身の投影を演じている」

 

「ハンドバッグという無垢な静物は、現実の証明としてそこにある。何もなくても何かが残っていることの証明である」

WANDA

「対決よりも誤解を好み、終わるのを待っていた」

 

「自分の体を守ることが努力に値するとは思えないし、そもそも15歳にとって「自分の体」とはどういう意味なのだろう?孤独にならないこと、見捨てられないこと。ただこれだけが重要なのだ。『赤い砂漠』の中で、ジュリアーナは波止場をさまよいながら、船員にこう言う。”ある日、体が分離する”」

 

「ワンダは自分が来た場所、逃げようとしている場所、自分が残していくものに名前をつけることができずに、ただ見ている」

 

バーバラ・ローデンの出演を決めたのは、オノ・ヨーコのアイデアだった」(TV番組でジョン・レノンオノ・ヨーコと共演、『WANDA/ワンダ』について語った経緯)

 

「ワンダというキャラクターは、私自身の人生と私の性格、そして私が他人の人生を理解する方法に基づいたものです。すべては私の体験からきているものです」(バーバラ・ローデン

WANDA

バーバラ・ローデンの人生をまとめようとしたとき、私が直面したあらゆる困難について話した。すると彼は冷静にこう言った。"作り上げろ。作り上げればいいんだ"」

(著者がフレデリック・ワイズマンに相談しにいった件)

 

「彼女(バーバラ・ローデン)は、セリーヌの『夜の果てへの旅』、ゾラの『ナナ』、ゴダールの『勝手にしやがれ』、モーパッサンの短編小説、アンディ・ウォーホルの映画が好きだった」

 

「子供の頃は映画が嫌いでした。スクリーンの中の人々は完璧で、私は劣等感を感じていたのです」(バーバラ・ローデン

 

「(バーバラ・ローデンは)エリザベス・テイラー、デルフィーヌ・セイリグ、シルヴィア・プラスと同い年である」

 

「私も昔はそうでした。自分のアイデンティティがない。ただ人が望んでいるものになりたかったのです」(バーバラ・ローデン

WANDA

「エレーヌは優秀な研究者であり、マルグリット・デュラスが『かくも長き不在』の脚本を書くきっかけとなった新聞記事を、奇妙な偶然から探し出したこともある」

 

「長い間、一緒に書庫を探し回って、ようやく見つけたのである。その記事は1960年3月27日付の『サンデー・デイリー』紙の「ジャスティス・ストーリー」というセクションに掲載されていた」

 

「生きる理由はあまりないけれど、私は生きたかった」(アルマ・マローン)

 

「アルマ・マローンはアビリーンで生まれる。彼女はバーバラと同い年だった」

WANDA

バーバラ・ローデンはインスピレーションとなったニュース記事のヒロインが収監されていた場所を見つけるのに長い時間がかかったという。その刑務所に電話をして、アルマに会えないかと尋ねた。しかし刑務所の責任者は、アルマに会うことを拒否した」

 

「1970年4月8日に仮釈放された。その後、彼女は姿を消した。彼女は38歳だった」

 

バーバラ・ローデンの息子にもう一度手紙を書いて、彼女の書類の中にあるはずの切り抜き記事のコピーを頼んだ。しかし、返事はない」

 

 

などなど。著者は『WANDA/ワンダ』のロケ地を訪れたり、ダンサー時代のバーバラ・ローデンを知っている人物に話を聞きに行ったりしています。とても面白かった。

 

『WANDA/ワンダ』は絶賛公開中!!

映画「WANDA」オフィシャルサイト