『冬物語』評

Conte d'hiver

CINEMOREさんにエリック・ロメール冬物語』評「偶然への賛歌」を寄稿させていただきました!

cinemore.jp

 

「四季の物語」シリーズで一番思い入れのある作品なので、この作品について書かせていただいたことを嬉しく思っています。とはいえ全作品好きです。壁に貼られたオアシスのポスターすら恋しくなる『夏物語』。「人生って素敵!」、そして色彩豊かな『春のソナタ』。そして文字通り人生の秋が描かれた『恋の秋』。ロメール映画の豊かさは永遠です。そしてロメール映画の謎も永遠です。ロメールの伝記に関する書評で、ロメールの実人生と映画の関係における希薄さが記されていたのは、ちょっと微笑ましく感じました。「ロメールの映画を解き明かすヒントが彼の人生には希薄だ!」という笑。

 

Conte d'hiver

物語=映画をとことん信じた人なのだと感じます。『冬物語』のフェリシーのように。以下にロメールの言葉をランダムに。出典の大部分はエリック・ロメールのインタビュー集です。

 

「私の物語は場所の物語であり、それらを位置づけていくことが重要でした。フェリシーはある場所にいて、シャルルは別の場所にいて、お互いの姿が見えない。大都市の群衆の中で一人で誰かを探している人を描きたかったのです」

 

「登場人物は賢かったり、狂気を抱えていたりします。しかしそれは一概に「狂気」といえるようなものではなく、ある種の高揚感、精神的な熱狂、平坦な現実の拒否、時にはドン・キホーテのような狂気でさえあります。フェリシーはそういう優しい狂気を持っていると思います」

 

「たとえばロイックの家での食事は、教養のない女性と彼女を退屈させる会話をするインテリたちとの対立を描いているだけに見えるかもしれません。しかし突然フェリシーが会話に介入することによって、「彼女はシャルルと一生つながっているのではなく、もうひとつの人生の存在を通してシャルルとつながっている」という、この映画の主題に話が及んでいくのです」

ロメールはこのシーンがお気に入りとのこと。

 

「パリが小さな村であるかのように、まったく自然に「こんにちは」と言う。映画ではよくあることです」

 

「フェリシーをロイックと一緒にさせたり、別の男性を登場させたりすることもできたでしょう。でも、そうすると話が平凡になってしまうし、『喜劇と格言劇』シリーズのような話になってしまう。私はメロドラマ的な図式が欲しかったのです」

 

Conte d'hiver

「その俳優を個人的に知り、その役を演じる姿を見る必要があるのです。彼女が話してくれたことに触発されることもあります。フレーズからインスピレーションを受けることもあります」

 

「私はよく、俳優本人の属性を借用します。たとえば私の登場人物の一人が絵を描いたり、ピアノを弾いたりすれば、その俳優の役柄もそうなりますし、私の俳優の一人が、とても洗練されたクラシックな話し方をすれば、役柄もそうなります」

*フェリシーを演じたシャルロット・ヴェリとは短編映画『Le Canapé Rouge』でもう一度組んでいます。そこでは彼女の描いた絵が出てきます。マリー・リヴィエールとの共同監督作品!こちらも好きな作品です。

 

 「ストーリーの組み立て方という点で、ドキュメンタリーから多くを学んでいます。逆説的ですが、ドキュメンタリーはフィクションのためのアイディアを含んでいるのです」

 

「私の脚本は通常、演出や撮影に関する指示は一切ありません。多くの場合、台詞だけになります」

 

「内側と外側の関係は私にとって非常に重要で、窓のないアパートの住人を映すのは好きではありません」

 

「動いているときに写真的な魅力を発揮する俳優もいます。私はそれを”プレゼンス”と呼んでいます」

 

「オフィスで誰かを見たとき、その人がカメラの前でどうなるのか分かります。特に身振り手振りを通して、その人がカメラの前でどのような態度を取るのか分かります」

 

「映画では、ある種の統一されたカラーパレットが必要だと思いますが、統一されすぎてはいけません。それが映画と演劇を区別する点です。映画では付随的な色彩を見つける必要があります」

 

ハワード・ホークスほど完全かつ複雑な方法で存在という問題を扱った人はいないと言えるでしょう。そして、アルフレッド・ヒッチコックほど、ルックの問題を完全かつ複雑に扱った人物はいません。シネマが扱うことのできる問題は、この二つの問題で幅広くカバーされています」

 

「映画とはフィクションにおいてさえ発見の道具である」

 

記事に書きましたが、『緑の光線』で初めて女性のカメラマンがついたときのエピソード(スタッフを女性で固めたエピソード)はとても興味深いと感じます。でもロメールフェミニスト的側面は70年代の作品から既に表れてますよね。

 

エリック・ロメール「四季の物語」は絶賛上映中!!

エリック・ロメール監督特集上映 "四季の物語"【デジタルリマスター版】 | ヒューマントラストシネマ渋谷