CINEMOREさんにレオス・カラックス『アネット』評を寄稿させていただきました!「変奏のアネット」。
キャロリーヌ・シャンプティエの言葉がとても面白かったので、今回は彼女の言葉をご紹介します。めちゃくちゃ記憶力がよくて頭の回転の早い人なのだろうな、ということが伝わってきました。ある意味、カラックス以上に『アネット』のことを詳細に語ってくれている気さえします。レオスは本当にシャンプティエに出会えてよかったねと、心から思います。現在のチーム・カラックスの機能性にも似た充実ぶりが伝わってきました。
以下、キャロリーヌ・シャンプティエの言葉。
「アダム・ドライバーはヘンリーをダークに解釈することを選びました。彼による解釈です。アメリカの俳優は、自分の演技に責任を持ちますね。フランスで同じようにいくとは限りません。ここまで暗いキャラクターにしたのは、本当にアダムの選択だと思います」
「あのレベルの俳優を撮影できたことは、非常に感銘を受ける出来事でした。アダム・ドライバーの集中力と深みは、撮影現場でも際立っていました」
「アダム・ドライバーはアネットの撮影を楽しみ、私たちの集中力を感じ、彼が映画にもたらす強さがどこまでカメラに捉えられているのかを感じていたと思います」
「レオスはよく男性でも女性でも役者の立場に立って、シーンのリズムを実験することがあります。私はよくiPhoneで彼を撮影していました。たとえばヘンリーの最初のスタンダップ・ショーのリハーサルを、自分自身で、そして代役と一緒に行い、舞台上のキャラクターの動きを理解したのです」
「マリオン・コティヤールは信じられないほど多才で、キャラクターの背後に消えていきます。(中略)彼女は姿を消すことに並外れた才能を持っており、レオスはそれを『アネット』の中で幻想的な方法で使っています」
「レオスは強力な参考文献を提供し、それをコメントなしで伝えてくれます」
「レオスの参考資料は、私たちが技術について考え始めるきっかけとなるものなのです」
「レオスとはルックについてあまり話をしませんでした。彼が送ってきた写真や資料は、とてもシャープで感動的で、そこから彼が求めている感情を理解することができました」
「海藻のような糸を使った衣装は(亡霊になったアンのこと)、オランダのファッションデザイナー、イリス・ヴァン・ヘルペンの作品にインスパイアされたものです。マリオン・コティヤールのプロ意識は並々ならぬものがありました」
「あるスタンダップ・ショーで、観客に照明が当てられ、カラースポットが観客に降り注いでいるのを見ました。そのアイディアをヘンリーのすべてのショーで活かし、観客に同じ色のスポットライトを当てることにしました。各キャラクターは色で表現されています。たとえばヘンリーは緑、アンは黄色です。映画のほとんどが夜のため、黒が多く使われています。その黒を目覚めさせるために、あちこちに色を置いています」
「劇場の闇が二人(ヘンリーとアン)の宇宙を繋ぎ、多くのシーンが夜に起こる。私の課題は「暗闇をいかに映画に浸透させていくか。そしてそれにどう抗うのか」 ということでした。それは光ではなく、色を通しての試みでした」
「『狩人の夜』はレオスの好きな映画の一つで、参考画像にはその映画に登場する子供たちが写っていました。しかし、それはゴダールと同じように、ある映画が自分にとって何であったか?という大きなノスタルジアのことです。レオスにとっては、ほとんど無意識レベルのことなのだと思います」
「人形がどのように展開し、歩き、目を閉じるのか、また、どのように服を着せ、どのように飛行するのかを見ました。まさに、カメラによって人形を手なずける作業でした」
「ライティングでは本物の子供のような肌色を探しました。もちろん、パペットであることはおわかりいただけると思います。でも、レオスも私も、みんなも、シリコンなどでごまかしたくなかったのです。本物のパペットで、本物のパペット使いと一緒に撮影したほうが、より詩的で、より魅力的で、より勇敢になれるのです」
「俳優の演技の仕方に自由とリアリティがあるからこそ、私たちにとっては音楽のリズムを確認することが大きなチャレンジでした」
「撮影現場では、「サイレント映画を作っているんだ」と冗談を言ったりしていました」
「レオスはおもちゃが大好きです。現在、パリのポンピドゥーセンターで彼の展覧会を準備していますが、そこにはピンボールマシンやジュークボックス、そしておそらくプラキシノスコープ等が置かれる予定です。だから彼がパペットに惹かれるのは当然のことなのです」
などなど。余裕があったらカラックスの言葉も次回に。
『アネット』は、まだまだ絶賛公開中!