ミシェル・ウィリアムズ論

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Blue Valentine

リアルサウンドさんにミシェル・ウィリアムズ論「不完全な美への歩み」を寄稿させていただきました。ミシェル・ウィリアムズのことは現代で最も素晴らしい俳優だと思っているので、彼女について書くのはとても光栄なことでした。

 

realsound.jp

 

キャサリン・ヘプバーンを敬愛するミシェル・ウィリアムズ。とても聡明なことが伺える発言集。「不完全な美への歩み」というタイトルは、ミシェルの映画に対する考え方、発言からとったものでした。映画は動きを捉え続けるがゆえに、常に不完全なもの。だからこそ美しい。自分と考え方が同じだし、とても共感する言葉です。

 

「物語を頭に入れておくことは、私にとって重要なことです。食料品店でも物語を手に入れることができます。気をつけていれば、地下鉄でもストーリーを得ることができます。誰かが子供とどのように接しているのか。どのように爪を整えているのか。ビートに合わせて頭を振っているのか。それらを垣間見るだけで小さな瞬間を蓄えることができます」

 

「私はカメラが目の前にあるときにどのようにするかということに関して、2つのアプローチを実践しようとしています。自分のことを子供を殺したことがあると信じこませたり、宇宙船が頭上にあると想像したりすることができるなら、目線上にある厄介な黒いフレームを排除することもできるはずですからね。2つ目は、カメラとその背後にいるスタッフを取り込んで、彼らを見えないダンスパートナーにすることです。私はこの方法を好みます。純粋に好きで信頼できる人と一緒に仕事をしているときに起こりうることですし、シーンの中で別のダイナミックな遊びを取り入れることができます」

 

「ある日、彼女(ケリー・ライカート)が封筒を持ってブルックリンの私たちの家にやってきて、「特別なものをあげる」と言ったんです。それで、2階に上がって私のベッドに座ると、彼女は『ミークス・カットオフ』の第1稿を渡してくれたんです。これは、私の人生の中でもトップ5に入るくらい好きな瞬間です。なぜなら、期待はしていなかったけど、そうなることを望んでいたからです。これからもずっと、彼女と一緒に映画を作りたいと思っています。ケリーを知ることは、映画の教育のようなものだと思っています。彼女が私に教えようとしたわけではありませんが、それは私の中に浸透していきます。彼女の友人であり、彼女の好きなものを理解し、彼女に参考になる映画を教えてもらい、自分でもそれを探しに行くことで、今のところ、彼女のフレームを埋める方法を知っているような気がします。彼女が何を望んでいるのか。彼女が何に夢中なのか。彼女の好みもわかっています。ケリーと一緒に仕事をするときには制限があります。彼女が求めているスタイルは厳格に決まっています。その制限の中では、特殊であるがゆえに、実際にはとても大きな自由が得られるのです」

 

「『ブルーバレンタイン』の前編を作った直後は、これまでに経験したことのないほど楽しく軽快で幸せなものでした。ライアンも同じように感じていたと思います。だから、お互いにそれを壊すことはしませんでした。最初の数週間は、家の中でただ料理をしたり、食事を作ったり、ゴミ出しをしたり、予算のバランスを考えたり、ホームムービーを作ったりしていました。でも、それでは私たちが行くべき場所にたどり着けないので、デレクは私たちにステップアップしてもらい、お互いに喧嘩をするように言ってきました」

 

「毎晩、枕元にマリリン・モンローの本を置いて寝ていました。そして、彼女の映画を見ながら眠りにつくのです。子供の頃、枕元に本を置いて、それが浸透していくのを期待していたように。自分の体を壊して、彼女のイメージに合わせて作り直し、彼女の歩き方、話し方を学ぶような感じでした」

 

「私が映画を好きなのは、動いているからこそ不完全であるからかもしれません」

 

「1200ショットの絵コンテを描いたと思いますが、撮影を開始した日には、そのような絵コンテも、こうあるべきだという期待もすべて捨てて、ただ俳優たちに私を驚かせてほしい、お互いに驚かせ合ってほしいとお願いしました。私たちは実際に生きている映画を作ろうとしました。脚本があると、ある種の期待に縛られて、平板なものになってしまうような気がするんです。俳優たちには、「もし私がカメラの前で君たちのやっていることに驚いたら、観客もきっと驚くだろう」と言いました」(デレク・シアンフランスブルーバレンタイン』)

 

などなど。ケリー・ライカートとは次の作品でも組むそうです。楽しみ。

お時間のあるときに宜しくお願いします!