2019年ベストシネマ

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みなさま、よいお年を。年が明けて読んでくださる方には、新年あけましておめでとうございます。

昨年は幸運にも敬愛するクレール・ドゥニ監督にインタビューする機会に恵まれたのと、ジュリエット・ビノシュについて書かせていただく仕事をいただいたことがとても嬉しく、最終的にはとてもよい一年を過ごせたなと思っています。どちらも自分が映画に夢中になったルーツみたいなところと深いところで関わっているので、ありがたいご依頼でした。

以下に2019年ベストシネマ。

1. 『旅のおわり 世界のはじまり』(黒沢清
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To The End of The Earth / Kiyoshi Kurosawa

2.『ハイ・ライフ』(クレール・ドゥニ
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High Life / Claire Denis

3.『ジョジョ・ラビット』(タイカ・ワイティティ
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Jojo Rabit / Taika Waititi

4.『ヴィタリナ』(ペドロ・コスタ
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Vitalina Varela / Pedro Costa

5.『アイリッシュマン』(マーティン・スコセッシ
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The Irishman / Martin Scorsese

6.『Light of My Life』(ケイシー・アフレック
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Light of My Life / Casey Affleck

7.『ダンボ』(ティム・バートン
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Dumbo / Tim Burton

8.『ザ・デッド・ドント・ダイ』(ジム・ジャームッシュ
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The Dead Don't Die / Jim Jarmusch

9.『A Bread Factory Part 1&2』(パトリック・ワン)
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A Bread Factory Part 1&2 / Patrick Wang

10.『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(クエンティン・タランティーノ
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Once upon a time in Hollywood / Quentin Tarantino

11.『サスペリア』(ルカ・グァダニーノ
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Suspiria / Luca Guadagnino

12.『ビール・ストリートの恋人たち』(バリー・ジェンキンス
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If Beale Street Could Talk / Barry Jenkins

2010年代ベスト100に2019年の作品を11本入れてしまったことに今更気づき、慌てて大好きな『ビール・ストリートの恋人たち』を追加。バリー・ジェンキンスは世評高い『ムーンライト』よりも今作の方がずっと好きです。彼が敬愛するウォン・カーウァイからの影響という点でも断然こっちですね。影響を受けながら独自の解釈を広げているところだと思う。

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If Beale Street Could Talk / Barry Jenkins
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In the Mood for Love / Kar-Wai Wong

心のベスト1『旅のおわり 世界のはじまり』は「レポーターは反射神経でどうにでもなる。だけど歌はそうじゃない」というセリフがとても重要。反射神経を取り柄に、ある意味人の作った土俵で受動的な人生を送ってきたヒロインが、映画作家として「スタート」/「カット」の声を主体的にかけるようになり、あのラストで自分を演出する。それをアイドルだった前田敦子のイメージと重ねるのは正しい。だけどあれはむしろ映画(作家)の誕生、この世界へのヴィジョンの誕生を描いたラストなのではないだろうか。そこにこそ「世界のはじまり」がある。

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To The End of The Earth / Kiyoshi Kurosawa

あと、ここ数年で思い始めたことなのだけど「反射神経がよい」ことと、頭がよいことは全く違うことなんじゃないかと思う。世間ではそう解釈されているような気がする(反射的にうまく立ち回れる人=頭がいいみたいな)けど、それはもう本当に違うんじゃないかな?と思い始めてる。そこに対するアンチという意味でもこの作品のことは大好きです。

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Jojo Rabit / Taika Waititi

『旅のおわり 世界のはじまり』のことで長くなってしまったけど、『ジョジョ・ラビット』のことにも触れたい。本当にファンタスティックで素敵な映画!スカーレット・ヨハンソンのママぶりが愛しすぎる。そして新たなこども映画の傑作の誕生です。とびきりのラストシーンを見た人が「なんて素敵な映画!」って興奮ぎみに言ってる姿が浮かぶもん。

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Annette / Leos Carax

さて、2020年はレオス・カラックスウェス・アンダーソンの新作が発表される一年です。2020年代のスタートは凄いことになりそうだ。そして2020年はクリステン・スチュワートジーン・セバーグを演じる『セバーグ』が公開されるというジーン・セバーグ・イヤーでもあります。つまるところ、『ホーリー・モーターズ』のカイリー・ミノーグの「さよなら」の意味、余白を探っていきたいということ。そして個人的にはこのジーン・セバーグの言葉を胸に生活していきたい。幸せにならなければとか、楽しく生きなきゃとか、そういった幸せ信仰みたいなものから自由になりたいな、と強く思います。


「お金で幸せは買えないけど、幸せがすべてではない」(ジーン・セバーグ
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Jean Seberg