『ロング、クリア・ヴュー』(ミア・ワシコウスカ/2013)


ミア・ワシコウスカの初監督作品、短編『ロング、クリア・ヴュー』がすごくいい!ティム・バートンガス・ヴァン・サントジム・ジャームッシュの撮影の方法を直に経験してきた”若いながらも歴史あり”なミア・ワシコウスカが、とても見晴らしのいいクリアな視点で撮りあげた珠玉の短編だ。脚本の構成、及び、撮影の構成を、主題以外のことには目もくれずに周到に突き詰め、且つ、主題と戯れる「若さ」にさえ成功している。視点を少しズラすだけで物の見え方はまるで変わるよ、といういたってシンプルな発想の元、実験映画で試行するような枠組みを何の気取りもなく成し遂げている。よく考えられた末に至ったシンプルさというべきか、映画自体は物凄く真っ直ぐなんだ。ファーストショットとラストショットのややアクロバティックな撮影による少年の反射。この反射をこちら側に差異として認識させるために脚本と撮影の構成が組まれている。たとえば自分の手を左右の目を閉じたり開いたりして交互に見ることで生まれる、同一の位置からの二つの視線の獲得。だんだんとこの視線の対象(手)が自分のものではなくなっていく感じといえばよいか。さらに視線の対象が自分に向けられた「視線」であった場合、、、。ミア・ワシコウスカの無邪気な試みは、まったくアナログな手段でドッペルゲンガー的な肖像をカメラアイによって創りあげる。これは紛れもなく映画に向けられた映画なのだ。




最初と最後の画像はロケハン中のミア・ワシコウスカ。いやー、この作品は何かしら書かずにはいられなかった。ミアちゃんのことです、長編はいつか間違いなく撮るでしょう。気長に待ちますぜ。