『Des Filles en Noir』(ジャン=ポール・シヴェラック/2010)
レオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』に出演していたエリーズ・ロモーの主演作『黒衣の少女たち』。『ダークナイト』のコスプレをしたりする自殺願望の少女2人の物語。この作品は必ずしも傑作とはいえないかもしれないけど、いつまでもゴツゴツと頭の中に張り付いて離れない。つくづく一本の映画というものは良いとか悪いのジャッジで決まるものではないのだよ(だから星取り評とか嫌いなのです)。同じような題材を扱っていながらソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ』とはまったく正反対の趣き。酷く暗く救いのない話。こんな厨二病付き合ってられるかよ、と思いきや、この少女たちの痛みと同じ時間を生きることができた。
ジャン・コクトーのような霧の画面をつくるシヴェラックの演出(監督はジャン・グレミヨンをフェイヴァリットに挙げている)と何よりエリーズ・ロモーの怪物的な演技、唯物性が素晴らしい。仮にこの作品を見てカラックスがエリーズ・ロモーを起用したなら、至って納得のいく話だ。涙を流さないエリーズ・ロモーの強がった言葉の端々から零れ落ちる生と死に対する恐怖が、表情を通り越した次元でこちらに迫ってくる。演技・演出の勝利とは本来こういうものなのではないだろうか。そこには簡単には割り切れない複数の感情が渦巻いている。二人の無邪気な自殺シーン、お酒に酔ったエリーズ・ロモーの足取りの怪物性に震えた。ちなみにクレール・ドゥニの新作『Les Salauds』にもエリーズ・ロモーは起用されている。キアラ・マストロヤンニの息子の子守をするちょい役だけど、強く印象に残った。エリーズ・ロモーのまなざし!