DCPRG@日比谷野音

大雨という最悪なコンディションはダンスをするのに何の関係もなかった。この日のステージに渦巻いた圧倒的なグルーヴに熱狂したすべてのクラウドが証人になるだろう。フロアは複雑なリズムを刻むダンスミュージックのケイオスで包まれ、やや後方の位置で跳ねるように踊っていた私は、客席が暴発を起こす凄まじい光景を前に完全に覚醒した。レボリューション・イズ・ノット・コンピューターライズド。つまりグルーヴは情報化できない!復活したデートコースの、以前より丸みを帯びた発狂寸前の、しかし何処までもヘルシーなグルーヴは生活にしなやかな強さを与えてくれる。音楽の薬効としての効き目は抜群だ。それは夢から覚めない状態ではなく、むしろ覚醒されたままの状態を意味する。ベースの強い弾き音が効いた!


この日の客席の暴発を文字にすることはとてもじゃないができない。少なくとも私はあのような光景を日比谷野音で見たことがない。ペペが脳内ダンスによる殺傷ならば、デートコースは極めてフィジカル。だから野音に響いた「キクチィーー!」というヤローの野太い声に強い共感を覚える。


以前と何が違うか?という問いに、この日のステージ&フロアーは見事に応えていた。懐かしいという感情は狂乱のグルーヴによって、あっという間に霧散された。デートコースのライブに初めて行ったときのことを思い出す。すごい、すごいと圧倒されつつ、複雑なリズムにどう踊っていいか分からなかった。デートコースのライブで面白いのは、フロアで踊るクラウドのダンス、リズムの取り方がバラバラだということだ(それはデートコースのコンセプトと合致する)。どの楽器に合わせて踊っているのかを読むのが面白い。この日は新メンバーによってリズムが流動的に丸くなっていた。と同時に、フロアの客もこの複雑なリズムに慣れっこの様子だった。ふと気づくのは、リスナー生活を続ける上で、いつの間にか菊地成孔の掲げる「ポリリズム」にステージとフロアが教育されていたということだ。新メンバー(新人)も今日の客席も、ごく自然にこのグルーヴを享楽していた。以前とはスタート地点がまるで違うのだ。


この日の前座を務めたアメリカン・クラーヴェのリッチー・フローレス、ヨスヴァニー・テリー・カブレラが1曲目から参加していたことも大きい。人種混合による新たなグルーヴが形成されていた。リッチー・フローレスと大儀見さんがお互いの手の平のタッチを交えながらパーカッションを競い、叩き合う微笑ましいシーンはこの日のハイライトだっただろう。助っ人として期間限定で加入した元ジュディマリ(!)のTAKUYAはギターの音色がデートコース仕込みではなく、あくまでジュディマリ仕込みともいえるステージングがいい意味で異彩を放っていて面白かった。


アンコールで出てきた菊地成孔に、熱狂したフロアからヤローの野太い声が飛びかう。フロアに向かって「お前ら、落ち着け、落ち着け。分かった!、落ち着かなくていい(笑)」と放つ菊地さんにフロアは一段と盛り上がる。これに爆笑すると共に、そう、落ち着かなくていい、このケイオスのまま人生をグルーヴしきってしまえ、と、すっかり生活を覚醒された心持ちなのだ。アンコールの『ミラー・ボール』に涙。GET DOWN ON THE GROOVE。音楽は凄い。音楽の神こそ最強だ。泣きながら踊れ!


次回は来年2月18日。21世紀のグルーヴに覚醒されよう!待ちきれないよ。パワー・トゥ・ザ・ピープル。そういえば、この日はジョン・レノンの誕生日だったね。


追記*あんまり熱狂して踊ってたんで足の爪が剥がれてること気づかなかったんだ。いま、ムチャクチャ痛い。