土岐麻子

こう訃報の狙い撃ちのような状況が続き精神力がまま落ちているのですが、スカパーで土岐麻子さんの七夕ライブ(2時間半。ノーカット?)を見て少し救われたような気持ちになりました。音楽って素晴らしい。アース・ウィンドウ&ファイアー「September」の白熱するジャズアレンジカヴァーまで、結末に向かうでもなく、どこまでもフラットな土岐麻子さんの唄声は、星空へと放たれる。リクエストコーナーでパティ・オースティン「Say you love me」の素晴らしいカヴァーの次に演奏された小泉今日子「夜明けのミュー」のカヴァーがやけに胸に沁みました(てっきりネコの唄だと思ってました)。


菊地成孔氏がスパンクハッピーで「フィジカル」をカヴァーしたときも思ったのですが、80年代といえば青春時代、ではなく全くの子供時代なのに、妙な突き刺さり方を残してるヒット曲が少なくない。80年代、週末に出向く街の景色がやけにキラキラして見えたのは、ただ単に子供の視界の狭さの故か、果てまた時代のせいか。残念なことに、あれだけキラキラして見えた地元の街の景色は、現在完全に廃れてしまっているのですが。街の中心に大きなデパートが廃墟のまま10年以上もの間、放置されているのが全てをもの語っている。


以前、幸運にも菊地成孔氏とお茶をする機会があって「エレクトロクラッシュでさえ全然80'sリバイヴァルじゃなかった、あんなのまだまだ鬱だよね」と仰っていたのですが(エレクトロクラッシュ自体が現在では懐かしい響きになりつつあります)、又、このときとは別の発言で、パフュームを「80年代リバイヴァルじゃなくて、90年代ノットデッド派の延長に聴こえる」と仰っていて、80年代をろくに知らずとも大きく頷いてしまいました。スパンクスの「フィジカル」には80年代的な狂騒の雰囲気の中に、ラリー・レヴァンから始まったハウスミュージックの信仰(其処には流血の天使と笑顔の悪魔が共存します)が張り裂けんばかりに内包されていた。胸元に血を滲ませながら何処までもハッピーに踊るというか。いや、パフュームがダメというわけじゃないですよ、むしろ好きです(新作『トライアングル』では四つ打ちの中に様々なリズムの音色を添えていく「Speed of Sound」が素晴らしいと思います)、念の為。


「夜明けのミュー」が実に素晴らしかった、やっぱ音楽って素晴らしいね!という話だったのですが脱線しすぎました。キーボードの80'sな音色が突き刺さるんですよね。土岐麻子さんとキャサリン・ヘップバーンジョージ・キューカーの『男装』があまりにも素晴らしくて!)に救われた気持ちです。そんなわけで愛聴している土岐麻子さんによるマイケル・ジャクソン「Human nature」カヴァーを。今週末はクラムボンとマイスパレード@新木場を聴きに行きましょう!

STANDARDS on the sofa~土岐麻子ジャズを歌う~

STANDARDS on the sofa~土岐麻子ジャズを歌う~

VOICE ~WORKS BEST~

VOICE ~WORKS BEST~