『馬泥棒のバラード』(エイブラハム・ポロンスキー/1971)


相対性理論の「ふしぎデカルト」をリピートしながら水道橋へ。相対性理論の奏でる音楽って、この人たちアッタマいいんだろうなー、って。「フジカラーで写す、七不思議、不思議 シミュレーション心霊現象」。

で、本日はアテネフランセにてクリス・フジワラ氏による「アメリカ映画における時間とパフォーマンス」講義第20回目。伝説の映画作家/脚本家エイブラハム・ポロンスキーの遺作『馬泥棒のバラード』。何故かゲンズブールバーキンが出演してるインディ作品。ポロンスキーWHO?という方は以下の追悼文を参照してください。
http://www.esquire.co.jp/web/hollywood/2003/02/post_1.html


クリス・フジワラ氏も仰るように非常に語りにくい奇妙な作品。同一シーンでディゾルブ繋ぎ等、おかしな編集がクリス氏から指摘される。馬の走りを妙なカッティングで繰り返す変なシーンがある。終始、馬、そして馬。奇妙、それでいて開放感に溢れているのは、たとえばジェーン・バーキンが乗っている馬車の馬が奪われるシーン。馬車の荷台を男達が手押しで勢いよく街まで駆け抜けさせるのだけど、荷台に立つバーキンが勇ましく腕を振り回しているのがメチャクチャ楽しい。荷台から落ちるゲンズブールは白い衣装が泥まみれ(これは終盤もう一度繰り返される)。そして馬といえば、ユル・ブリンナーが酒に酔って女性が歌い出す(素晴らしい!)内にこっそり馬を奪っていくシーンが面白すぎた。あと夫人のご指名を受けてイケメン男子と馬に2人乗りのシーンとかもなんかエロい。ラスト、森の林の中をそれぞれのカップルが肩を抱き合い去っていくロングショットがこの上なく美しい。


クリス・フジワラ氏の講義では『ボディ・アンド・ソウル』(ロバート・ロッセン)の結末を巡るロッセンとポロンスキー(脚本)の意見の相違話が面白かったです。ここでのポロンスキーがとった立場から彼の作家性を抽出していく論の進め方。『ボディ・アンド・ソウル』という凄まじい傑作を覆っているあの異様な「暗さ」を思い出しました。『ボディ・アンド・ソウル』、未見の方はVHSが出ているので是非ッ。

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