『フォーエヴァー・モーツァルト』(ジャン=リュック・ゴダール/1996)

フォーエヴァー・モーツァルト [DVD]

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池袋新文芸座にてゴダールを3本。ゴダールの作品では音楽が全てカットアウトされている、という先日の菊地成孔氏の日記を読んだばかりなのもあって、いつも以上にその音響処理を注意深く聴いてみた。たしかにゴダール映画の音楽といえば鮮烈なカットアウトの記憶ばかりだけど、実際どうなのだろうと。で、本当にそうだったわけですが。ゴダールの映画から何かを「盗む」としたら、やはり鮮烈な印象を与える編集なのだろうな、と改めて思った次第。


ボレロ』と名付けられた映画の撮影。映画女優と映画監督の間で繰り返される「Oui」と「Non」の応酬。いつでも儚い影としてスクリーンに投射される俳優という職業。いつ終わるでもない「Oui」と「Non」の応酬の果てに、砂浜に倒れこんだ女優にようやく「カメラ、オーケー。録音、オーケー」の合図がでる。しかしそのOKテイクさえも、やがて無残な戦死の静止画としてモンタージュされてしまう。ここで「俳優」は肯定されたのか否か。完成した映画の初日、映画館に並ぶ子供は「やっぱり『ターミネーター4』にしよッ」と一斉に帰ってしまう。誰も見ることのない映画。ここで「映画」は肯定されるのか否か。


「音符が多すぎる」優雅で軽やかなモーツァルトの楽譜がパラパラとめくれるラスト、これは『JLG/自画像』の白紙のノートときっちり照応している。とても美しい!