『MEMORIA メモリア』評

MEMORIA

CINEMOREさんへの『MEMORIA メモリア』評についての番外編。アピチャッポン・ウィーラセタクンティルダ・スウィントンによる幸福なコラボレーション。以下、アピチャッポンの言葉を。

cinemore.jp

 

「記憶がどのように働き、経験、特に映画を見る経験によってどのように形成されるのか、とても興味があります。私たちの世代にとって映画は、物事をどのように記憶するかに大きな影響を及ぼしていると思います。そのような観点から、それぞれの空間、物理的な世界と俳優や観客の内面的な世界の両方で何が起こっているのかを見つめることに主眼を置いています。それはほとんど演劇のようなもので、見るためのゲームのようなものです」

 

「映画で神を表現することは、想像の繰り返しであり、そのようなイメージやイコンを提供するために以前から行われてきたことを繰り返してしまうことになります。そのようなことはやめるべきです」

 

「次の世代に同じことを繰り返すのではなく、様々な人々の想像力によって視覚的に映画が喚起されるような社会に移行したいのです」

 

タル・ベーラ監督と一緒に授業をしていたときに、「動くな」と言われたんです。タイ以外の国で映画を撮るな、負けるから。君には無理だと言われました。彼は移動の際に自分自身が何かを失ったと言いたかったのだと思います」

 

ティルダ・スウィントンと一緒に仕事をしたかったので、随分前にこのプロジェクトは始まっていました。前作『光りの墓』に彼女を出演させようとさえ思っていました。でも、しっくりこなかったのです。あのプロジェクトは、あまりにもローカルで、私の故郷であるタイに近すぎたのです。私たち2人にとって異国の地、まったく安全で馴染みのない場所、感覚を開放するような場所を探す必要があると感じました」

 

「彼女はただ頭の中でこの音を鳴らしながらコロンビアを漂っているのです。それがこの映画のすべてだと思います」

 

「私たちは一緒になってジェシカを理解しようと多くのエネルギーを注ぎました。彼女が言葉を理解することによって、どのように文化とつながるかはとても重要なことなのです」

 

「ティルダはモニターに映るテイクを一つ一つ見ていきます。多くの俳優が、そのイリュージョンを壊したくないという理由でモニターを見たがりません。しかし、彼女の場合、フレームを研究する必要があるのです。そして彼女は「ああ、これはおかしい」と言うのです。ジェシカってこんな感じなのかな?とか。そして徐々に彼女は歩き方、動き方を本当に変えていきました」

MEMORIA

「ティルダと私がコロンビアで映画を作ると決めたとき、今までやってきたことから一歩離れて、まだ理解していない新しいものを探すような感じでした。自分を見失い、耳を傾け、見つめ直すことがとても大切なのです。それでもこの映画は、私がこれまでやってきたことと似たようなものになりました。私の初期の作品と宇宙を共有しているような気がします。"私たちには私たち自身の感情の星があり、それを持ち運んでいるのだ "と」

 

「フランス人のエドゥアール=レオン・スコット・マルタンヴィルが1860年に録音した、人間の声による最初の音源をミックスに使用しました。あのシーンには、私やティルダ、そして全人類の思い出が詰まっているのです」

 

「このような恍惚とした気分の解消を経験した最後の映画は、カンヌで上映されたタイ映画『トロピカル・マラディ』だったと思う。私が思うに、この作品は傑作であり、神秘的で変幻自在な魔力、人々を愛に傾けるようなラブストーリー、原始的な威力を放つ自然の悪夢、人間の本性の荒野に我々を誘い込み、そこに置いていくのである」(ティルダ・スウィントン

 

そして記事でも触れましたが、短編『BLUE』は『MEMORIA メモリア』の理解につながる超絶な傑作です!

BLUE

 

ウェス・アンダーソンとレオス・カラックス

Wes Anderson

ウェス・アンダーソンのお誕生日!ということで、ウェス・アンダーソンレオス・カラックス汚れた血』について語った言葉を以下に。この言葉は、ウェス・アンダーソンへの白紙委任状で『汚れた血』が選ばれたときのもの。誰かが特定の映画について語るとき、それは思いのほか自分のことを語ることに似てしまう。これはウェス・アンダーソンにも当てはまります。そのことがよく分かる言葉です。特に「私が行きたかった場所そのもの」という言葉に。Happy Birthday、ウェス・アンダーソン!!

Mauvais Sang

 

「私は『汚れた血』を、形式や方法ではなく、その作品が引き起こす観客の反応によって定義される芸術作品として分類したいと思います」

 

「1994年にこの映画を観たときの私の反応は、そういうものだった。レオス・カラックスが創り出した全く予想もしなかった宇宙は、なぜか私が行きたかった場所そのものだったのです」

 

「この映画のまるで手品のように絶え間なく続く創意工夫に満ちた映画的手法に。一握りの音楽のテーマと魔法に。絶望的にロマンチックでユニークで象徴的なキャラクターの悲しい詩に。そして二十代の私の心に鮮明に刻まれた、レオス・カラックスと非常に才能ある彼の協力者、ジャン=イヴ・エスコフィエの作り出すイメージに。私が感動し目を奪われたように、あなたも感動してくれることを願っています」

 

以下の『フレンチ・ディスパッチ』評では、ウェス・アンダーソンレオス・カラックスに関する言葉から書かせていただきました。

otocoto.jp

 

以下の記事はウェス・アンダーソンのことをよく知ることができる名著『旅する優雅な空想家』の書評。

www.kaminotane.com