My 100 Best Films of The 2010s (1-10)

2010年代、私の100本。当然まだまだ自分が発見できていない、名前すら聞いたことのない作品だっていっぱいあると思う。なので10年後に考えたら、また違うリストになるかもしれない。でも節目として残しておきたかった。ここに網羅したリスト100本はすべて好きな作品。すべて特別な作品。たとえ100位だからって、物凄い強い思い入れがある。思い入れがなければ、そもそも選ぶはずもなく。

 

以下の10本はリストを作る際、最初から一度も変更のなかった10本。正真正銘の私的ベスト10。来たるべき次の10年に思いを寄せながら。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 

1.『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』/ショーン・ベイカー(2017)

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The Florida Project / Sean Baker (2017)

 

最高の子供(クソガキ)映画の誕生。子供に憧れた大人が撮った映画ではなく、子供と一緒に遊んでいる映画であることがこの作品を別格にする。映画が子供たちやママと共にそこに生きている。記念碑的傑作。この子たちは撮影のために集まって、撮影が終わったら解散って感じが一切しない。子供を絵本の中に閉じ込めない。思い出の中に閉じ込めない。映画が終わっても、この子たちと同じ世界で息を吸っているということが泣けるというか。子供映画が21世紀になって初めて更新されたとすら思っている。

 

2.『EDEN/エデン』/ミア・ハンセン=ラヴ(2014)

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EDEN / Mia Hansen-Love (2014)

 

若者たちが吸い寄せられる狂騒の夜、明けの朝に向かうすべての呼吸が整うような静けさ。女性を描くことの反射が主人公の輪郭を浮かび上がらせていたように、この映画が反射させるものの豊かさを愛さずにいられない恋をすること夢に破れること皆で踊り合唱し熱狂すること反抗すること連帯すること、全てがミラーボールのように若者たちを照らしている。そのプリズム、光の分散の強さ儚さ!

 

3.『6才のボクが、大人になるまで』/リチャード・リンクレイター(2014)

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Boyhood / Richard Linklater (2014)

 

「一瞬を逃すな」という言葉に対して、「それは違うと思うの」と彼女は言う。なぜなら「一瞬は私たちから永遠に離れない」から。こんなに泣いた台詞はないかもってくらい泣いた。

 

4.『グランド・ブダペスト・ホテル』/ウェス・アンダーソン(2014)

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The Grand Budapest Hotel / Wes Anderson (2014)

 

ウェス・アンダーソンが夢想する映画の配置、に留まらぬマスタープランとは、物質と物質、時間と時間を隔てる区切りを区切りとして用いることはしない。感無量映画につき、以下に過去記事。ウェス・アンダーソンジョゼフ・コーネルの作品との関係性ついて。

 

https://maplecat-eve.hatenablog.com/entry/20140624/p1

 

5.『ホーリー・モーターズ』/レオス・カラックス(2012)

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Holy Motors / Leos Carax (2012)

 

100年前に壊れたはずのオルゴールが突如メロディーを奏で始めたかのような、恐怖と驚きと、何より望みが託された大傑作。カイリー・ミノーグのバイバイが何に向けられているのか、を最近はよく考える。いや、この先もずっと考えると思う。同じく感無量映画につき、過去記事を以下に。こちらも自分の書いたものの中で例外的に好きな記事。やはりカラックスの作品はいろんな意味で自分のルーツなので。そして来年公開されるだろう新作『アネット』にドキドキしながら待つ!

 

https://maplecat-eve.hatenablog.com/entry/20130406/p1

 

6.『旅のおわり 世界のはじまり』/黒沢清(2019)

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To The End of The Earth / Kiyoshi Kurosawa (2019)

 

感情の発見。感情が自分に追いつくということの発見。前田敦子、発見せり。世界の果てに花束を!!!自分を見つめ直したいときに見たい映画というものがあって、例えばレオス・カラックスのすべての作品とか『ガンモ』とか、『ユリイカ』とか、最近では『フロリダ・プロジェクト』もそうだったりするんだけど、『旅のおわり 世界のはじまり』は詰まるところ、そういう類いの作品。

 

7.『ノクトラマ 夜行少年たち』/ベルトラン・ボネロ(2016)

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Nocturama / Bertrand Bonello (2016)

 

ボネロは一貫して遅延された自殺を描いている。あの故意に引き伸ばされた時間がなければ、ボネロの映画の魅力は半減してしまう。終盤の無言の警察隊のリズムは、スリリングな「ゲーム」のリズムとして冒頭の少年少女が足早に動くリズムとシンメトリー(どちらもほぼ無言)になっている。では、どちらの「ゲーム」に感情が通っていないかといったら明確に前者であって、だからこそあのラストは悲痛を極める。とんでもない傑作! https://

 

8.『アラビアン・ナイト』/ミゲル・ゴメス(2015)

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Arabian Nights : Volume1-3 / Miguel Gomes (2015)

 

ミゲル・ゴメスは凄まじい境地に達してしまった。このタイトルを聞いて、一体誰がこんな映画を想像できるというのか。21世紀の映画の最高到達点とすら思う。

 

9.『ベイビー・ドライバー』/エドガー・ライト(2017)

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Baby Driver / Edgar Wright (2017)

 

彼女の名前を歌う曲がある→レコードの針が落ちる→恋人たちがステップを踏み始める!ああ、なんてロマンチックな作品なんだろう!トゥルー・ロマンス!真実のロマンス!恋人たちのキスに!恋人たちのステップに!ありったけの花束を!そしてリリー・ジェームズが私たちのリリー・ジェームズになった記念碑的作品。

 

10.『エヴァの告白』/ジェームズ・グレイ(2013)

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The Immigrant / James Gray (2013)

 

並大抵ではない覚悟で撮られた作品。グレイはまだ若い監督だけど、遺作にしてやるぐらいの熱量が画面にほとばしってる。熱量を受け止めるのに精一杯だった。「読心術」という台詞が出てくるけど、この作品自体が「読心術」。劇中マリオン・コティヤールは強い意思によってほとんど表情を変えないが、すべてが伝わるようにできている。グレイの演出との関係性に喧嘩をしながらも見事に応えたマリオン・コティヤールは、この作品で現代最高の女優となった。

My 100 Best Films of The 2010s (11-20)

11.『ザ・マスター』/ポール・トーマス・アンダーソン(2012)

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The Master / Paul Thomas Anderson (2012)

 

偉大な建築物のような映画であり、同時にとてもパーソナルな映画のようでもある。PTAの最高到達点。

 

12.『ハイ・ライフ』/クレール・ドゥニ(2018)

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High Life / Claire Denis (2018)

 

「前進しているのだけど退行もしている」空間設計。ぬるいところが1ミリもない大傑作!「私にとって映画作りとは不可能への旅なのです」(クレール・ドゥニ)。敬愛するクレール・ドゥニにインタビューする機会に恵まれたので、よろしければ是非!

http://cinefil.tokyo/_ct/17266059

 

 

13.『ムーンライズ・キングダム』/ウェス・アンダーソン(2012)

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Moonrise Kingdom / Wes Anderson (2012)

 

人の地図と人の地図がまさかのタイミングで重なり合うところ。『ムーンライズ・キングダムが、そしてウェス・アンダーソンの映画が教えてくれるのは、そういうことです。泣。

 

14.『ライク・サムワン・イン・ラブ』/アッバス・キアロスタミ(2012)

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Like Someone In Love / Abbas Kiarostami (2012)

 

ここには映画という装置の上でのみ浮かばれよう大きなドラマが、大きなエモーションの流れが、ノスタルジーによって幻聴するメロドラマの交響楽さえもが、たしかに存在する。この映画のことが好きすぎて、思い出すだけでやられてしまいます。

 

15.『あの頃エッフェル塔の下で』/アルノー・デプレシャン(2015)

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Trois souvenirs de ma jeunesse / Arnaud Desplechin (2015)

 

「映画が君を作るんだ」というゴダールの言葉を踏まえた上で、『あの頃エッフェル塔の下で』の「君はたくさんの映画から学んだことを全て裏切った」という台詞を思い出すと、その開いてしまった傷口の深さに胸がザックザクに切り裂かれる思いだ。「完璧な愛は友情には変われない」。泣く。

 

16.『ジョジョ・ラビット』/タイカ・ワイティティ(2019)

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Jojo Rabit / Taika Waititi (2019)

 

この作品のスカーレット・ヨハンソンが個人的にスカヨハ・オブ・ザ・イヤー(2019)。スカーレット・ヨハンソンは今が(これからが)一番素敵なのではないだろうか、と思わずにいられない。I wanna hold your hand!!!そう、手を取り合おう。映画の始まりから涙が出そうになるほど素晴らしい。そしてデヴィッド・ボウイ映画にハズレなしの法則。

 

17.『呼吸 -友情と破壊』/メラニーロラン(2014)

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Respire / Melanie Laurent (2014)

 

女の子たちの笑いのスピード。笑いが女の子たちの距離を急速に縮め、笑いが女の子たちを引き裂く。それは過剰な情熱の代償。監督メラニー・ロランによる大傑作。と同時に2010年代の役者さんが撮った映画、-+心のマイ・ベスト1。

 

18.『アンジェリカの微笑み』/マノエル・ド・オリヴェイラ(2010)

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O Estranho Caso de Angélica / Manoel de Oliveira (2010)

 

マノエル・ド・オリヴェイラ × ピラール・ロペス・デ・アジャラ(あのとめどなく美しい映画『シルビアのいる街で』の女優)というだけで、極上の作品に決まってるじゃないか。オリヴェイラの映画を見たことがないという人に最初にお薦めしたくなる作品。

 

19.『バルバラ セーヌの黒いバラ』/マチュー・アマルリック(2017)

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Barbara / Mathieu Amalric (2017)

 

冒頭に響くバリバールの鼻唄が「声の亡霊」として、いくつもの身体と音声の残像を作っていく様が素晴らしい。躁病的なバリバールと同じく、躁病的な編集がサイケデリックなまでに炸裂する。何より圧倒的なジャンヌ・バリバール。死の香りと唄声が憑依している。美しい!

 

20.『20センチュリー・ウーマン』/マイク・ミルズ(2016)

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20th Century Women / Mike Mills (2016)

 

すべてのショットが愛おしい。自分の言ったことは失敗も含めて全力で跳ね返ってくる。見たもの聞いたものすべてが切実に跳ね返ってくるところに初めて関係性(映画)が生まれる。マイク・ミルズはその生成に果敢に挑む。過去記事もよろしければ是非!

 

https://maplecat-eve.hatenablog.com/entry/20170612/p1